!!工事中!!
大目次
FASTシステム
2026年version
AAV
in situ hybridization
2026年version
免疫組織化学
超解像顕微鏡
構造MRI
不安様行動、うつ様行動の解析
FASTシステム
2026年version
遺伝子改変マウスのデポジットが進み(Jaxマウス、理研BRCなど)、かつCRISPR全盛の時代になり、遺伝子ノックアウトを手に入れることが難しくなくなりました。そうなると、FASTのSを意味する、”Stop”
カセットをノックインする必要性が減ってきました。また、tTSを作動させるためには、homozygous tetO alleleを用意しないといけませんが、1)
TRE(tetO + CMV mini P)を、2) 翻訳開始部位の直前にノックインさせる、ことにより、胎生致死・新生児致死になるケースが散見されるようになりました(失敗例は論文になりません。。。)。
平岡優一さんとの10年以上に渡る検討から、1) TRE(tetO + CMV mini P)ではなく、tetOのみを、2) 転写開始部位よりも上流に(詳細な部位は今は秘密)、3)
CRISPRでノックインすることで、安定してtetO homozygoteをとることができています。2026年現在、ラボでは5つの遺伝子のtetOノックインが走っています。
AAV
遺伝子発現量のばらつきが、観察結果も、操作の結果もばらつかせるので、AAVによる遺伝子発現は好きではなく、AAVを使うことは控えていました。しかし、アイデアをすぐに実現させる、試してみるにはAAVのスピードに頼らざるを得ません。近年のAAV技術のう
ち、ラボで特に役立っているのは、以下の3つです。
1) BBB透過型のserotype 3種(PHP.eB, AAV-F, 9P31)を場面ごとに使いこなす
2) 群馬大学 平井先生・今野先生が作られたMP法(Minimally Purification Method)
3) AiE(Allen Institute enhancers)
AAVの技術を高めるには、AAV injection後に、遺伝子発現を迅速にチェックして、PDCAを回すことが必須です。
In situ hybridization
マウス海馬歯状回。赤がGAD67、緑がcalretinin。蛍光二重ISH
(写真工事中)
マウスVTA。ドパミン神経特異的に発現させた外来遺伝子のISH。DIG-AP-NBTのISHでは、シグナルは青紫色になる。赤はNuclear
Fast Redによるcounter sitain
(写真工事中)
2026年version
この15年でISHは大きな変貌を遂げています。RNAscopeに代表されるmultiplexかつ高感度な検出。Spatial transcriptomicsによる網羅的な解析。いずれも論文でよく見ますが、ちょっと否定的なことを述べておきます。
RNAscope
信号が弱すぎて、ファインダーを通して信号を見ることが難しい。言い換えると、いくらでもノイズから画像を作れてしまう。僅かなノイズを、信号と断じるには、様々なコントロール実験を組み合わせなければならないが、殆どの実験はそれを省略している。「会社が大丈夫と言っているから」この信号は大丈夫。そんなことを主張する研究者は信用できますか?RNAscopeで十分に強い信号は、従来型のFISHでも同じ。わざわざRNAscopeを使う必要性が無い。真に高いレベルでRNAscopeを使いこなしている論文かどうかを見極めるべき。
Spatial transcriptomics
野生型を対照とした公共データは大変役立つ。AllenのMERFISHは学生に常時参照させるようにしている。これの欠点は、同じqualityで、病態脳のMERFISHを行うのが技術的にも、予算的にも難しいこと。では、このラボではどうしているか。今も、2012年versionと変わらず、NBT/BCIPによるcolorimetric
ISHと、TSAを用いたFISHの2つです。その手順を大雑把に紹介するとともに、参考になるコメントも残します。
1) まずは関心遺伝子のmRNA発現を公共データでざっと調べる
いわゆるcolorimetric ISH: https://mouse.brain-map.org
Single cell data: https://celltypes.brain-map.org/rnaseq/
MERFISH: https://brain-map.org/bkp/explore/abc-atlas
2) cRNA probeを作る
すでにvalidateされたprobeの鋳型plasmidを他の研究者からもらう、というのが一つの手段。最近は、FANTOM cloneを購入し、その全長を使うことが殆ど。かつてISHprobeの長さとして何が適当なのか議論があったが、今は、「長ければ長いほど良い」と私は見做している。5,000塩基でも全然OK。短さの最小は150
bp。ただし、短いprobeは、遺伝子発現量が高い遺伝子に限る。
3) NBT/BCIPによるcolorimetric ISH
これが基本。一緒に検鏡し、目を慣らす。ポジコン、ネガコンを幾重にも仕込む。コントロール切片を検鏡するときの一例;Csfr1(c-fms)は、microgliaにしか信号が出るはずがないprobe。これで神経細胞にうっすら信号が見えれば、全体としてノイズが高かったラウンドだったと理解する。Csfr1
ISHは突起まで信号が見えるのが正しいが、somaにしか信号が見えないときは、全体として信号が弱かったラウンドだと理解する。検鏡の際のポイントはこれ以外にも沢山ある。スライドを持参してくれれば、他のラボの方でもアドバイスできます。
4) ISHが壊れるとき
不注意な初学者の出現により、システムはすぐに壊れる。メンバーの人数が少ないときは数年に1回、信号が出なくなったが、近年は年に数回信号が出なくなる。その都度、ゼロからシステムを作り直している。壊した学生を責めるつもりはなく、むしろトラブルシューティングから学んで欲しい。私自身も、生理研池中研究室でできあがったシステムに乗っかってISHをやっていて、ISHができるつもりでいた(2006年まで)。しかし、コロンビアに留学してゼロからシステムを立ち上げる必然性が生じた。試薬を一つ一つすべて準備することを通じて、はじめて技術が身についた。レールに乗っかっているうちは、一人前ではない。
5) 当研究室がISHに頼る理由1
tTA, tTSによって遺伝子発現を操作する、AAVによって遺伝子発現をもたらす。狙ったとおりに遺伝子発現が変わっているのか、研究者自身が検証しないといけない。抗体を用いた免疫染色もパワフルな検証技術だが、自分が操作している分子を検出できる抗体があるとは限らない。その点、ISHはあらゆる遺伝子を検出できるといって過言では無い。そのためISHを頻用する。
6) 当研究室がISHに頼る理由2
細胞数を数えるときにISHが優れています。皆さんに問いますが、アストロサイトの数を数えるときにどうしますか?GFAP IHCをしますか?オリゴデンドロサイトの数を数えるときにどうしますか?MBP
IHCをしますか?当研究室では、各細胞種の数を数えるときにどの遺伝子ISHを行うのか決めています。
7) 当研究室がISHに頼る理由3
c-fos, Npas4, Arcなどの最初期遺伝子の検出にはISHが優れていると思います。イベント発生から5分で最初期遺伝子mRNAは検出できますので、タンパク質を検出するより優れていると考えています。また怪しい抗体が多いですからね。
免疫組織化学
3つのポイントを押さえれば、強い信号を得ることが必ずできます。
1) 良い抗体を使う
2) 抗原の賦活化
3) グリオキサール固定
1) 良い抗体
北海道大学名誉教授の渡辺雅彦先生が作成されたポリクローナル抗体(https://nittobo-nmd.co.jp/reagents/product_list.html)は、極めて強い信号が出ます。さらにここから売られている殆どの抗体は、ノックアウトマウス脳を用いてvalidateされています。
ここにない抗原を検出したいときに頼る会社・ライブラリーは、DSHB(https://dshb.biology.uiowa.edu)
Neuromab(https://neuromab.ucdavis.edu)この2つになります。いくつかのNeuromab抗体は、DSHBから購入することができます。
DSHBには掘り出し物がいくつかあります。掘り出し物に出会えれば、安価に安定してモノクローナル抗体を入手しつづけることができます。ただし、モノクローナル抗体は、一般的に、信号強度の点で渡辺ポリクローナル抗体に遠く及びません。
2) 抗原の賦活化
当研究室では、麻酔後、10 mLの4% PFAで潅流。その後overnightのfixationを基本としています。この固定の強さに対して、ISHではproteinase
Kの濃度と時間が決まりますし、IHCでは抗原賦活化の方法が決まります。10 mM pH 6.0のクエン酸バッファーで98度40分を当研究室の抗原賦活化の基本としています。電子レンジ、オートクレーブなど色々ありますが、うちはすべてこの基本です。抗原賦活化についての歴史と実際を詳しく記載した名著がありますので、特に慶應関係者は図書館で借りてその部分だけ読んで欲しいです。余談になりますが、私が大学院の3年を藤田医科大学で過ごしました。その時に、抗原の賦活化を教わったのが、病理の堤先生で、私はこの本を隅々まで読みました。2026年現在もその情報は色あせません。渡辺慶一先生、長村義之先生、堤寛先生はいずれも慶應病理学の大先輩です。
渡辺・中根 酵素抗体法 (改訂4版)名倉 宏/長村 義之/堤 寛 編集
3) グリオキサール固定
グリオキサール固定も渡辺雅彦先生に教わりました。このコラムを読んでください。
https://nittobo-nmd.co.jp/column/column-04.html
当研究室では、以下の組成のグリオキサール固定液を用いています(3% w/v グリオキサール, 20% w/v エタノール, 0.75% w/v
酢酸, pH 5に調整)。グリオキサール固定によって、ほとんど信号が得られなかった抗体が、劇的に良く染まるようになった経験を何回もしています。「この抗体、染まらねえや」といって廃棄する前に、一度グリオキサール固定を試すことを勧めます。この成功の3条件を前提として、当研究室において新規抗体を手にしたときは以下をルーチンで行い、抗体の善し悪しを判定しています。
A. PFA固定、凍結貼り付け、賦活化無し
B. PFA固定、凍結貼り付け、クエン酸バッファーで賦活化
C. グリオキサール固定、凍結貼り付け
超解像顕微鏡
このところ、シナプスを観察することが増えてきたため、SIM(Structured Illumination Microscopy):構造化照明法を用いて分子局在を見ています。空間解像度は、STORM,PALM,
STEDに及びませんが、ファインダー越しに見えるものをそのまま画像化できる直感性が好きです。SIM観察を成功させるためのTIPSは、岡部繁男先生から習いました。ありがとうございました。SIM観察の成功には、強い信号を得ていることが必須です。そういった意味でも、渡辺抗体がSIMに大変役立っています。
構造MRI
機能は構造に宿る。これはナノメートルレベルから、センチメートルレベルまでの生体構造物に広く保存されたルールです。脳の機能が脳の構造に宿ることを認めるなら、脳の機能を研究するのに、脳の構造MRIで脳の構造(この場合はvolume)を記述することは、研究の入口として推奨される。こんな考えに基づいて、マウス脳構造MRIをルーチンで行っています。そして、関心脳領域を絞り込んでいます。2026年現在での、マウス脳volumetric
analysisのお作法を列挙しておきます。興味のある方は参考にして下さい。
・in vivoかex vivoか
マウスを生きたまま、麻酔下で構造MRIを取得することの最大のメリットは、経時的に構造変化を追いかけることができる点。1匹の撮影にかかる時間が長い、体動で画像の質が下がる、撮影期間中にマウスを維持するスペースが課題。マウスを潅流し、その固定脳を用いることのメリットは、in
vivoでの課題が解消される点。しかし、潅流にばらつきがあると、それだけで画像がばらつくという欠点がある。当研究室では、阿部さんが一人ですべてのマウス潅流を担当するので、他の追随を許さないレベルでばらつきが小さい。我々にとっては良いことだが、この属人性が横展開には課題。
・VBMかDBMか
T2値が交絡因子となるvoxel based morphometryが、特にマウス脳の解析では嫌われる。今後、VBM解析を選んだだけで論文がrejectされるだろう。その対案は、deformation
based morphometry。単にvolumetric analysisと記述されることが多い。マウスにおけるFreeSurferは2026年1月現在では存在せず、マウス皮質厚を全脳で統計学的に検定することができていない状況にある。
・どんなtemplateを使うか
これまでAllen templateを参照にして、そことの比較で各群の特徴を検定していたが、template freeで解析することを要求されるようになっている。つまり集めたサンプルの平均でtemplateを作成し、そこからの差を見ることが求められている。
不安様行動、うつ様行動の解析
2022年1月にラボ面積が拡大したことによって実現できたのが、防音室の作成。それまではラボ総面積が100 m2だったために、防音室を持つことが現実的ではなかった。ではどうしていたかというと、故吉田君は、建物に誰もいない日曜祝日に不安様行動の行動解析をしていた。
現在は、4つの独立した防音室があり、そこでopen field test, elevated plus maze,
novelty suppressed feeding test, learned helplessness testを行っている。